牛窪恵さんに聞く、Z世代はなぜ電柱広告をポジティブに見るのか?Z世代の価値観・メディア接触・電柱広告の可能性 - 東電タウンプランニング株式会社東電タウンプランニング株式会社 牛窪恵さんに聞く、Z世代はなぜ電柱広告をポジティブに見るのか?Z世代の価値観・メディア接触・電柱広告の可能性 - 東電タウンプランニング株式会社

電柱広告・電柱看板の東電タウンプランニング

広告解説
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東電タウンプランニングでは、2025年に実施した「広告に関する一般生活者調査」において、Z世代が他世代に比べて電柱広告にポジティブな認識を示すという特徴的な結果を確認した。
具体的には、「電柱広告は景観や街並みに調和していると思う」「電柱広告を見て、新しいお店を知ることがある」「電柱広告を出す店・医院・施設は頑張っている印象」といった項目で、20代の反応が相対的に高かった。
そこでまず、この定量調査結果をもとに、東電タウンプランニング内で「なぜZ世代は電柱広告に比較的ポジティブなのか」という仮説設計を行った。
続いて、その背景をより深く捉えるため、Z世代本人へのデプスインタビュー調査を実施し、広告への向き合い方や街との接点、情報接触の実態を探った。
さらにその結果をより広い視点から読み解くために、世代・消費・コミュニケーション研究の第一人者である牛窪恵さんに2回にわたりインタビューを実施した。
本記事では、こうした一連の調査・検討プロセスを踏まえながら、まずZ世代の価値観やレトロ志向、親世代との関係性を整理し、次にメディア接触や広告全般の受け止め方を確認し、最後に電柱広告がどのような文脈でポジティブに受け止められるのか、そしてその活かし方までを追っていく。

牛窪恵さん
世代・トレンド評論家/インフィニティ代表取締役。
立教大学大学院客員教授。修士(経営管理学/MBA)。企業各社と世代や消費者行動、家族、コミュニケーション、若者文化などの研究・商品開発を長年にわたり手がける。『おひとりさま』『草食系男子』など、時代を象徴するキーワードを世に広めた。テレビ番組のレギュラーコメンテーター出演も数多い。

1. Z世代の価値観を読み解く

「意味があるか、誰を幸せにするかを考える世代」
Q. まず、牛窪さんは今のZ世代全体をどう見ていますか。

牛窪さん:
Z世代は、SNS・動画ネイティブで、子どもの頃からデジタルに囲まれて育ってきた世代です。常に多くの情報や選択肢に触れているからこそ、時間の使い方にはとてもシビアで、タイムパフォーマンスを重視します。
一方で、単に効率だけではなく、「このことにどんな意味があるのか」「誰を幸せにするのか」といった意味志向も強い。社会にとってどんな意味をもたらすのか、自分が何のためにその行動を取るのかを考える世代だと言えます。

「アップデートし続けないといけないという危機感が強い」
Q. 行動面では、どんな特徴がありますか。

牛窪さん:
彼らは、学生時代や社会人になって数年後から生成AIにふれ、総じて自分の仕事がいつAIに奪われるか分からない、という危機感を持っています。
また、スマホのアプリが日々アップデートされるように、様々なスキルを身につけて自分をアップデートしなければ、という意識も強い。もはやいつ何が起こるか分からないVUCAの時代ですから、一刀流ではなく二刀流、三刀流で、幅広い方面に武器となる「手札」や「アイテム」を増やしていかなければ、ともよく口にします。

「みんなに受け入れられたいわけではない」
Q. 人間関係やコミュニティの捉え方には、どんな特徴がありますか。

牛窪さん:
彼らの多くは、万人に受け入れられようとは思っていません。
たくさんの「いいね」が欲しいというより、自分と感性の近い人、気心の知れた仲間、自分の界隈の人たちとつながっていたい、との思いが強い。背後には、彼らの幼少期に深刻化した「いじめ」や「スクールカースト」などの社会課題も影響していそうです。自分の外側の大多数に、本当の自分をわかってほしいとは考えない若者が多いんです。

「親子関係の近さも、Z世代の大きな特徴」
Q. 家族との関係についてはどう見ていますか。

牛窪さん:
一般にZ世代は、親御さんと非常に仲が良いことで知られます。母娘、父娘、母息子、父息子を問わず、LINEを含めたSNSで頻繁に情報をやり取りし、趣味や興味関心も共有している。
親が勧めたお店に子どもが行くとか、逆に子どもが勧めたものを親が取り入れるとか、そういう日常的な伝承が頻繁に起きていますね。

「Z世代は、かなり多様化していて単純には括れない」
Q. Z世代をひとくくりに語ることは難しいのでしょうか。

牛窪さん:
一つ上の「ゆとり世代」以降は個性重視の教育が進んだ上、SNSで自分なりのキャラや世界観を表現する習慣が身についた若者も多い。本当に多様化していて、単純なカテゴライズはしにくい世代です。
またZ世代は、日本で命名された世代名ではなく、アメリカのX、Y世代から続く名称です。それだけ日本でひと括りにするのが難しかった象徴でもあります。

「親との情報共有、レトロ関心、街歩き感度は一つの軸」
Q. その中で、どういう分け方で見るのが有効ですか。

牛窪さん:
一つは、親御さんと日常的にどれぐらい親密に話や情報のやり取りをしているか。
もう一つは、いわゆる「エモい」感覚や昭和・平成レトロにどれぐらい関心があるか。親世代の時代感覚に惹かれる若者は、ほかと同じように街歩きや街の中を撮影しても、エモい看板や広告への気づきが違うと思います。

「一つのグループにどっぷりではなく、複数の居場所を持つ」
Q. アイデンティティの持ち方にも特徴はありますか。

牛窪さん:
ありますね。今は一つのグループにどっぷり浸るより、少しずついろいろな領域をはしごして、複数のアイデンティティを使い分ける若者が増えています。
そもそもSNSは年功序列より、知識や最新情報を持つ人がリスペクトされやすい世界です。たとえまだ若く社会的地位がなくても、複数のコミュニティに身を置くことで、自己肯定感やアイデンティティを高めやすくなるわけです。

「Z世代は、昔そのものより“想像できる過去”に惹かれている」
Q. Z世代のデプスインタビューにおいて、多くの対象者でレトロ好きや平成ブームが確認できたのですが、何が背景にあると見ていますか。

牛窪さん:
Z世代は、昔の時代や事象そのものに単純に惹かれるというより、「この時代はどんな雰囲気だったのかな」「どんな人間関係が一般的だったのかな」などと想像を膨らませた過去に惹かれているんだと思います。
今や未来の時代や技術は、彼らにとってある程度、具体的に想像できる部分も多い。だからこそ、むしろ多少抽象的でエモい昔のほうがワクワクできるんですね。

「昭和だと遠すぎる。平成ぐらいがちょうどいい」
Q. また昭和よりも平成に惹かれる対象者が多かったのですが、それはなぜでしょうか。

牛窪さん:
個人差はありますが、昭和だとちょっと遠すぎて、想像力を膨らませにくい若者も存在します。
その点、平成初期以降は親世代の話ともつながるし、景気感(不況)やインターネットの浸透など、自分たちがギリギリ空気感を想像できる。だから“ちょうどいい距離感”なんだと思います。

「同じ平成ブームでも、刺さっているものは人によって違う」
Q. 平成ブームといっても、みんな同じものを見ているわけではないのでしょうか。

牛窪さん:
そうですね。同じ「平成が好き」でも、惹かれる中身はかなり違います。
ギャル的な平成文化のパワーに魅力を感じる子もいれば、アナログ感の残るゲームやキャラなどのエモさに惹かれる子もいる。だから、同じ“平成レトロ”で括ってしまうと見誤るところはありますね。

「アナログや手触り感に、いまはレアな価値がある」
Q. レトロやヴィンテージに惹かれる背景には、何があると思いますか。

牛窪さん:
デジタルで育ってきた世代だからこそ、チェキのようなアナログな技術や、手触り感のあるものがレアに感じられるんですよね。
令和の時代は、多くがデジタルやAIで完成度の高いものが、素早く効率よく入手できますが、それとは逆の、不完全さや手間暇をかけることに価値を感じる部分があるのでしょう。

「レトロは、上の世代と対話できるテーマでもある」
Q. レトロが親世代との対話にもつながっている面はありますか。

牛窪さん:
あります。昭和歌謡や平成のカルチャーって、親世代と「それ知ってる」「当時こうだったよ」と会話しやすいテーマなんですね。
Z世代は、家庭でも飲み会でも、世代を超えて気軽に対話できる接点を求めている側面もあり、レトロはその橋渡しにもなっています。

「失われつつある風景を“残すべきもの”として見ている」
Q. 街や景観の中の古さに惹かれる感覚もあるのでしょうか。

牛窪さん:
はい。純喫茶や昔ながらの本屋さん、古い商店街のような風景にわざわざ足を運んで写真を撮るなどするのは、失われつつある風景を“残していくべき日本の資産”として見ている部分もあるからだと思います。
単に古いからではなく、そこに今の街にはない素朴な空気感や人間らしさを感じていること、また彼らが永続性やサステナビリティに関する教育を受けて来た影響もあるのではないでしょうか。

2. メディア接触と広告受容

「Z世代は、SNSネイティブ・動画ネイティブ」
Q. Z世代のメディア利用の基本構造をどう見ていますか。

牛窪さん:
一般的なZ世代が、新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアよりSNSに接する時間のほうが長いのはよく知られるところですが、もう一つ、動画の影響も無視できません。
ゆとり世代の学生時代は、まだ静止画が中心でしたが、Z世代はYouTubeはもちろん、インスタグラムやTikTokのショート動画も“なんとなく”観ていて、「時間が溶ける」などと言います。この違いは大きいですね。

「自分から取りにいくというより、流れてくるものに接触している」
Q. SNSや動画は、どういう接し方をしているのでしょうか。

牛窪さん:
自分から能動的に情報を取りに行くというより、夜に流し見している中で、自然と流れてくるショート動画などに接触している印象が強いです。
AIの進化によって、黙っていてもパーソナライズされた情報がどんどん入ってくる時代なので、みずからGoogle検索などで能動的に情報を探すより、受動的に構えるようになるのは、時代の必然だと思います。

「ポップアップストアは、“今行きたい”をつくるリアル接点」
Q. Z世代のデプスインタビューにおいて、ポップアップイベントがZ世代に受けていると聞きました。ポップアップストアがZ世代に刺さっている背景は何でしょうか。

牛窪さん:
キャラクターやドラマ、ブランドなどとコラボする、期間限定のポップアップストアが盛り上がってきた背景には、都市部の地価高騰による賃料の上昇や、それに伴う空き店舗増加などの影響もあるでしょう。大がかりな常設施策ではなくても、期間限定で、比較的低コストで出店できるのが、ポップアップの強みです。
また、いまはSNSで情報を拡散できるので、多少不便な場所でも、話題性があれば認知されやすい。しかも多くが期間限定なので、「今行かなきゃ」という気持ちを後押ししやすいんですね。
電柱広告も、単体で完結させるより、こうした期間限定の魅力や、若者が好きな「街歩き」の導線と組み合わせると、相性がいいと思います。現地で見つける、撮る、そしてSNSでシェアするという一連の流れをつくりやすいですから。

「広告は見ているが、“押しつけられる広告”は嫌う」
Q. Z世代は広告全般をどう受け止めているのでしょうか。

牛窪さん:
もちろん、広告をすべて嫌うわけではないのですが、繰り返し出てくるインターネット広告に対しては、どうしても「邪魔なもの」という感覚が強い。とくに近年、そうした声が顕著です。
おそらくこの1、2年で、デジタル上ではAIによるパーソナライズ広告が増えたからでしょう。自分のデモグラフィックや普段の言動に基づく広告が表示されやすいわけですから、プライベートに割り込んでくるものとして捉えられやすくなっているのだと思います。

「悪目立ちより、簡潔さや謎めきの方が効く」
Q. どんな広告表現が受け入れられやすいですか。

牛窪さん:
今の若者は情報の洪水の中で育ってきたので、昔でいう奇抜でとんがった広告は、異質なものとしてスルーされるか、むしろ悪目立ちしてノイズになる危険性もあります。
それよりは、メッセージが簡潔にまとまっていて、それでいて少し謎めいているもの、余白があるものなどのほうが、SNS上で「何だと思う?」などと話題にしやすく、広がる場合がありますね。

「リアルな広告には、デジタルとは違う価値がある」
Q. デジタル広告とリアル広告の違いはどこにありますか。

牛窪さん:
既に言及しましたが、デジタルが当たり前になるほど、手間のかかったリアルな手ざわり感のあるものが付加価値を帯びやすい側面があります。
昔はリアルで会うことやリアルで広告を出すことが当たり前でしたが、今はそうではない。とくにコロナ禍以降は、広告もショッピングも、むしろデジタルが当たり前で、リアルは「わざわざ」見たり行ったりするものになった。だからこそ、リアルの広告やショッピングに、昔とは違った価値を見出そうとするようになったのだと思います。

「駅広告のような“リアルな場の強さ”はむしろ高まっている」
Q. 屋外広告は、Z世代にどう受け止められているのでしょうか。

牛窪さん:
近年の駅広告はかなりインパクトが強い印象ですね。特に構内ジャックのようなものがあると、それを撮ってSNSにアップする若者が多い。実際にその場で見た人だけでなく、SNSを通じて見る人も数多くいるので、リアルのインパクトがさらにデジタルで増幅されているのは確実でしょう。

「屋外広告は広告というよりは風景」という見方も確かにある」
Q. 今回の調査やインタビューでも、「屋外広告は広告というよりは風景」という反応が出ています。この点はどう見ますか。

牛窪さん:
十分理解できます。先ほどのネット広告とは違い、嫌だったら一瞬で目をそらしてしまえば気にならないので、嫌悪感をおぼえにくいのだと思います。
またネット広告は、ぼんやり動画を見ているときでも瞬時に飛び込んでくるので、ノイズだと感じやすい。対する屋外広告は、街の一部として溶け込んでいる側面があり、その広告も含めて「風景」と捉える感覚も分かります。

「屋外広告は、情報というより街の体験の一部」
Q. 屋外広告には、情報伝達以上の役割もあるのでしょうか。

牛窪さん:
あるはずです。今の若者の多くは、街歩きやお散歩が好きですし、歩きながら何かを探したり見つけたりすることにも喜びを感じやすい。ネットで知ったありきたりの情報ではなく、自分自身の目や足で見つけた情報なので、それだけ価値が大きいのです。屋外広告も、そうした「街中の発見」という貴重な体験装置としても機能しうると思います。

3. 電柱広告の可能性

「見にいく媒体ではないが、生活導線の中では自然に触れている」
Q. 電柱広告そのものへの接触は、どんな特徴がありますか。

牛窪さん:
普段は、そこまで強く意識されている広告ではないと思います。大きな看板や屋外ビジョンに比べると目立ちにくいですし、テレビや動画のCMのように「次に広告が来るな」と構えて見るメディアではないですよね。
ただ、街歩きの中で自然に目に入るものですし、生活導線の中で接触しているという感覚は、多くの若者が持っているはずです。
たとえば、初めての待合せ場所に行くとき。Googleマップで近くまでは行けても、最後の数歩で「どっちだろう」と迷うことはありますよね。そういう時に、電柱広告の矢印や表示が役立つことを、何度かは経験しているはずです。

「話題や回遊文脈が乗ると、急に“探す対象”になる」
Q. どういうときに、電柱広告は見られるのでしょうか。

牛窪さん:
若者への取材から実感するのですが、ふだんは街の風景の一部として流されやすい電柱広告も、何らかの「見る理由」が生まれると、一気に意識される存在になるようです。
たとえばSNSで話題になっていたり、「ちょっと探してみたい」と思わせる仕掛けがあったりすると、電柱広告も単なる表示ではなくなる。
具体的には、街歩きや聖地巡礼、コミュニティでの話題性など、広告が街を楽しむ文脈に入ってきたときに、わざわざ見つけに行く対象へと変わるんですよね。

「若い世代には、“残したい風景”の側に入りやすい」
Q. 東電タウンプランニングの調査では、20代は他世代よりも「電柱広告は景観や街並みに調和していると思う」が高く出ました。これはなぜでしょうか。

牛窪さん:
今の若い世代は、整いすぎた「無菌」に近い街だけを良いと感じるわけではないんです。むしろ少しごちゃごちゃした、何らかの刺激が得られる街にワクワクするところがあります。そんな中で、雑多で多様な情報が入り混じった電柱広告を、ノイズでなく「刺激」と捉える若者も少なくないでしょう。
また、これも先ほどお話ししたように、昭和レトロや平成レトロを「残していくべき日本の風景」として見ている側面もある。電柱も、街並みを乱すものというより、むしろレトロに近い原風景の一部として受け止められている可能性が高いと思います。

「均質なデジタル情報の外側にある地域情報と出会わせる」
Q. 調査では、20代は「電柱広告を見て、新しいお店を知ることがある」も他世代より高く出ています。どう見ますか。

牛窪さん:
日常的に触れている情報が、デジタル中心になっていることの反動もあるかもしれません。
ネットやSNS経由の情報は便利な半面、どうしても印象には残りにくい。とくに近年は、受け身のままでもいろんな情報が得られますから、そこから得られる感動も薄れています。

一方の電柱広告は、普段の移動の途中で、ふと目に飛び込んできたとき、ハッとする瞬間がある。偶然の出会い、いわゆる「セレンディピティ 」のような感動です。そうした出会いから入手したローカルなお店や施設の情報こそが、かえって新鮮に感じられるのではないでしょうか。

「“頑張っている”は、裏側の手間への想像力でもある」
Q. 「電柱広告を出す店・医院・施設は頑張っている印象」も20代で高く出ました。どう解釈しますか。

牛窪さん:
ここはすごく面白いところです。Z世代は動画世代ですから、一般には自分たちでも簡単に手速く動画を撮影・編集できる。その分、ネット上の動画広告の製作者に、リスペクトを感じにくいとも言えます。でも、電柱広告は違います。まず企画・デザインした広告を、工場で形にする人がいて、それを街中に設置する人がいて、さらには悪天候でもメンテナンスする人がいる。
「頑張っている」というのは、広告主や代理店だけではなく、そういう裏で支えている人たちに向けられた敬意のように思えます。デジタルでなくわざわざリアルの物として形作ることの大変さや、風雨に晒される広告を維持する人たちの苦労に思いを馳せ、そうした手間を「価値」として捉えているのではないでしょうか。

「新しさの競争より、“維持されていること”に価値を見る」
Q. Z世代が電柱広告をポジティブに捉える背景には、どんな価値観があるのでしょうか。

牛窪さん:
今の若い世代は、先ほどお伝えした「サステナビリティ」に通ずるような、維持や持続性の価値や難しさを知っている世代でもあります。街をどう存続させるか、自分たちの地域をどう守るかということについても、他人事でなく当事者意識が強い。自分が通った学校が廃校になったり、故郷の市町村が合併されたり、ということを、身近に体験してきた世代だからです。
だからこそ、街の中で機能し続けるものや、それを支え続けている人たちに価値を感じやすい。電柱広告も、そうした文脈で受け止められている可能性があります。

「街歩き・SNS・体験を横断させてこそ力を出す」
Q. 電柱広告の接触度を高めたり、効果を最大化したりするには、どう考えるべきでしょうか。

牛窪さん:
電柱広告は、単独でコンバージョンを上げようとするより、街歩きやSNS、リアルの体験価値などと合わせて考えた方が有効だと思います。
まさに、見つけたくなる、撮りたくなる、シェアしたくなるような仕掛けをつくることが大事ですね。

「“続きが気になる”“自分で見つけたい”が回遊を生む」
Q. 接触度向上の具体的な方向性はありますか。

牛窪さん:
たとえば、続きものの広告にして「次はどこにあるんだろう」と探したくなるようにする。あるいは、クイズや謎解き、宝探しのような形式にして、街歩きや仲間との競争や協力、対話と結びつける。とくに散歩や街歩きが好きな若者たちは、“自分の目や足で見つけた情報”に価値を感じやすいので、一定の回遊性があると面白いと思います。

「強みは、その街の暮らしの線上に置けること」
Q. 電柱広告ならではの強みはどこにありますか。

牛窪さん:
いちばん大きいのは、その街に根ざした素朴な情報であること、ではないでしょうか。
マス広告のように広く一斉に届けるのではなく、日々の生活の動線の中で自然に出会える。
だからこそ、近くのお店や施設を知るきっかけになったり、街中や日常の小さな発見や小さな感動につながったりする。そうしたローカル感覚の「プチハッピー」にこそ、電柱広告ならではの価値があるはずです。

「制作・設置・維持の裏側まで含めて意味になる」
Q. 電柱広告は制作・設置・メンテナンスに手間がかかっています。そうした裏側を伝えることに意味はあるでしょうか。

牛窪さん:
あると思います。ただし、伝えるなら文章ではなくショート動画がいいですね。
工場で広告を形にしている人や、電柱に設置している人、雨の中でメンテナンスしている人。そういう、普段は見えない人たちの頑張りや苦労を具体的なシーンとして見せることで、電柱広告を見た際の感じ方も、かなり変わると思います。

「押し出しより、“意味のある存在”として届かせる」
Q. 最後に、電柱広告で大切なことを一言でいうと。

牛窪さん:
大事なのは、押し出しの強さよりも「これは社会や街の人々にとって、意味があるものなんだ」と、「意味」を感じてもらうことです。
いまの若い世代は、社会的な意義、そして街や周辺環境への影響などを鑑みて、消費したり行動したりする世代です。広告についても、単に損得や一時的な感情にだけ流されるわけではなく、その背後にある企業価値や「意味」を重視します。
お話ししてきたように、電柱広告はまさに街や日常の中で、素朴な情報や小さな感動を与えながら、人々を支え続けている。そうした社会的な意味や意義を、少し引いた距離感で訴え続けてこそ、真の電柱広告の魅力が伝わるのではないでしょうか。

まとめ

牛窪さんの話から見えてきたのは、Z世代が電柱広告を“古い広告”として切り捨てるのではなく、街の風景、地域情報、そして人の手で維持されているものとして受け止めている可能性だ。
デジタルが当たり前の時代だからこそ、リアルな場所に存在し、生活導線の中で偶然出会える情報には独特の価値が生まれる。しかもそれが、街歩きや散歩、ポップアップイベント、SNS投稿などとつながると、広告以上の体験接点にもなりうる。
電柱広告の可能性は、派手さではなく、街に意味を付加し、地域との関係を感じさせるところにある。Z世代のポジティブな反応は、そうした“維持される街”への感度とも結びついているのかもしれない。